8th SSESSION

フリドニア
〜フリドニア日記#1〜

1996/7/24〜8/4 新宿シアタートップス

作・演出:ケラリーノ・サンドロヴィッチ

出演:松野アリミ、二瓶鮫一、今江冬子、峯村リエ、平山直樹、三宅弘城、松永玲子、大倉孝二、長田奈麻、安澤千草、新谷真弓、宮本雅通、今津登識、澤田由紀子、井出泉、長尾ちよみ、廣川三憲、松浦努、村岡希美、鈴木雅子、山下優、KERA

<主要な役>ドリー=松野アリミ、中山等・中山守=二瓶鮫一、サンチェス=三宅弘城、秘書=松永玲子

<メモ>・ケラのシリアス・コメディーの重要なレパートリーの一つとなった「フリドニア」シリーズの第一作。
・ナイロン通販でビデオ購入可能。
・上演時間は2時間15分と短い。ケラが意欲的にナイロンの新しい形態を模索し始めた一作でもあり、一つの魅力でもある「無駄なパート」が徹底的に削ぎ落とされている。
・セットは上下と、上手に奧に抜ける2階部分、下手奧にも抜けられる。一部1階部分が窓として開く箇所もある。全体の色調がサイケデリックで、場面転換でこの上を切り込みの照明が動く場所があり、ちょっと目に悪い。
・キャスティングに犬山犬子、みのすけが出なかった初の作品。本公演において両名が欠番したのは、わずかにこの作品と「絶望居士のためのコント」のみ。この作品を例に出して「二人がいなくてもナイロン」と口にする人が多いが(ケラ自身もよく口にする)、実際にはそこまで言うほどではない。
・松野アリミがトップにクレジットされているが、ドリーは欠かせない主役といった感はなく、全てのキャストで異様な一つの世界を作っている印象が強い。むしろ「ドリー=主役」感が出たのは、シリーウォークプロデュースによる再演バージョン(この時、ドリーにあたるメグ役は植木夏十)。
・ケラの出演はほんの一瞬。そこだけ極めてばかばかしいやり取りが笑いになり、この作品でのケラ出演を評価する人が多い。
・「フリドニア」の地名はマルクス兄弟の映画から来たものだが、一つの地をめぐって話が入り乱れる構想は、ガルシア・マルケスの小説にヒントを得たとされている。地名については、マメチシキのQ13.「役名・名称」もご参照下さい。他にも、ギュスターブ・フロベールの作品、別役実のエッセイに触発されたとケラは書いている。
・「薔薇と大砲」まで継がれた役はなし。ただし、バラの香りとともに街が狂い始めるという流れは、今後も継承されていくことだろう。唯一、ニーノ・ロータの音楽は発展継承された。
・「薔薇と大砲」でこの曲をたまが演奏しているが、当初この公演にもたまは出演予定だった。かなりかっちりまとまっているのでイメージし難いが、そう言われてみれば入る箇所もありそうな気はする。
・作品そのものの構想は、二瓶鮫一が土星人に会って腰を抜かす、というイメージから発想された。あまり知られていないが「ウチハソバヤジャナイ」のパンフレットで、「ヤン先生、フリドニアに行く」というコピーが発表されており、構想期間は1年程度であった。
・ストーリーの流れが時間・空間を飛び越える場所が何カ所もあり、その矛盾さえ一つの舞台に乗っており、かなり快感。だがストーリー自体は悪夢的なニュアンスが強く、「4 A.M.」に続いて、笑いを期待した多くの観客が肩すかしを食らったようだ(実際離れた人も数多かったと聞く)。
・スライドで出てくる一つの命題に、「脳移植を行った際に、その脳は元の持ち主のものか、新しい体の持ち主のものか」というものがあり、これは「フランケンシュタイン」へと継がれる命題となった。また、出てくる医療方法もかなり奇天烈なもの。

<ちらしより>フリドニア日記・序文 その町に関してのさしたる資料も手元にないので、僕はここにその何たるかを記すにはあまりに無知だ。噂は時折耳にするものの、どれもこれもうさんくさい。
例えばある者は南ゲルゾフにある温泉町だという。ゲルゾフの地図では左端の一番下、こぼれ落ちそうな所にあって、パキトゥーナテ国境に近い。トゥー・マ・パルーマへもほんの一足だ。高台に上がると、すぐ前にンガン川が見える。(中略)そして至る所に湯水があふれている。いんちき療法で巨万の富を得た町長、中山等がその町、フリドニアを治めているのだという。
(中略)さてみなさん、そこで私は事の真偽を明らかにするべく、とうとうフリドニア行きを決意するに至った次第です。そのレポートを一年か少なくとも二年に一度は舞台にしてお見せしようという計画がこの「フリドニア日記」であります。どう転んでも奇妙な街であることはまず間違いありませんから、奇妙な芝居になることでしょう。可笑しいこともあり、悲しいこともあるでしょう、そしてなんでもないことも。御期待下さい。
ケラリーノ・サンドロヴィッチ

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