KERA・MAP #003

砂の上の植物群

2005/5/1〜14 新宿シアターアプル

作・演出:ケラリーノ・サンドロヴィッチ

出演:常盤貴子、筒井道隆、温水洋一、西尾まり、猫背椿、池谷のぶえ、赤堀雅秋、つぐみ、山本浩司、喜安浩平、渡辺いっけい

<主要な役>消崎由香=常盤貴子、國本浩二=筒井道隆、真柴玲子=西尾まり、ヨドム・現地の男=温水洋一、ミマツ=渡辺いっけい

<メモ>・2005年のKERA・MAP連続公演の第1弾として上演される。KERA・MAPの劇場規模としては最大で、ナイロンでもシアターアプルでの公演は数回だけ。役者の規模としても、NODA・MAPを想起させた「カメレオンズ・リップ」と並び、シリーウォークのプロデュース公演としてはもちろん過去最大の規模。キャストが段階的に発表されるなど、シリーウォークプロデュースとしては珍しい形を取った。
・出演者のうち、常盤貴子と山本浩司は初舞台。上演時間は休憩10分を含めて3時間15分。最近ではほぼ平均的な上演時間。
・固定されたスペースを使用するという意味ではシチュエーションコメディーであるが、タッチとしては完全にシリアスなもの。もはや「シリアス・コメディー」という単語を使うのも躊躇われるほどのストーリー。
・DVDの発売などは未定。他の作品よりは可能性が高い。ケラ作品史上初めて、シリーウォークから戯曲(上演台本)が発売された。
・セットは3パターン。1つ目は中幕が閉められた状態での機内のシーン(セットなし)。このシーンのみ設置マイクで台詞を拾音。2つ目は上手奧に突き刺さったロケット、下手には前後から上がることのできる階段が上階へ通じている。廃墟となった空き地が下手手前部分。3つ目は建物の部屋の一室、3階部分。下手中央寄り奧に抜けられるドア。下手手前のドアはベッドルームに通じる。簡易のテーブルと椅子が置かれ、下手奧にアップライト型ピアノ。ピアノの手前には電話、段差をつけてセンター奧にソファー。壁には絵が飾られ、これが「砂の上の植物群」。上手の穴の奧はトイレの設定、とかなり具象セット。構造としては中央の大規模な回り舞台に加え、下手手前側の小さな回り舞台。「東京のSF」と同じ造り。
・テーマソングは、新生ケラ&ザ・シンセサイザーズの「ナイト・サーファーズ」(アルバム「ナイト・サーフ」より)。
・部屋のセットは回り舞台だけでなく移動式で壁を作ってもおり、「カメレオンズ・リップ」を想起させる。穴の2階部分にも舞台が作られ、建物の屋上という設定。
・島に墜落した飛行機はカルカドル島から出発しており、この名前は「ウチソバ」に出てきたもの。
・映像や現地の言葉はスペイン語。現地の言葉が観客には理解できない辺りは「フローズン・ビーチ」に近い。
例:2幕終盤の現地のマリィの台詞「Si, si, destruir campos de cultivo es su hobby.」の訳は、「田圃を荒らすのは彼の趣味なんです」。台本を手に取って訳すと、また違った世界が見える。
・スライド・台詞のみの登場となるのがオギソ(小木曽。ジャーナリスト)、シズム(ヨドムの相方)、ヤスハラ(安原。クニモトが殺した)。また、キャスティングにない出演として、異星人と死神。
・「消失」からの流れを受け継いだ、重いトーンの作品になった。幼少時代の思い出、トラウマが様々な事件を引き起こしていく所なども同じ。SFとリアルの距離感も近い。ただ、重いながらも笑いが混在していることが多く、絶望と希望がないまぜになった新しい劇作の姿勢が垣間見える。「どうにもならない」という意味ではある種の不条理と言うこともできるが、以前よりもそれはより緊密に世界観と関連している。
・世界情勢がひどいことになっている近未来。東京が地震やテロでメチャメチャになっている中で、生き残った乗客が内紛の捕虜として捕らえられる。世界情勢の異常を見せた過去の作品に「ドント・トラスト・オーバー・30」や「テイク・ザ・マネー・アンド・ラン」。未来を測る台詞として、ナナの「携帯の番号がまだ090とか080だった時代」というもの。
・衣装は現地の物と合わせるように、民族衣装的な物が大半を占める。
・原題はパウル・クレーの絵画名であり吉行淳之介の小説名でもある「砂の上の植物群」から。中平康の映画作品もある。ケラはこの中でクレーの絵画作品のタイトルに主にインスパイアされたと語る。同じ小説を題材とした演劇作品に、LOVE THE WORLDの第1回公演「カラフル砂漠」(作・演出:西田シャトナー、02年)。戦争を遠くに見ている辺りは「薔薇と大砲」などに近い。このように、独自の新作というよりは、ケラ自身の集大成と言える作品になった。
・長い時間をかけて全ての人間が穏やかに狂っていく様は、むしろケラ作品においては珍しい。時間の移行は5分、1週間、2ヶ月。
・劇中発せられる銃弾は1幕では3発、2幕では5発。1幕は3発目でアカイシに当たる。2幕はミマツに向けられた物で、計5発。うち1発は暴発でケンタロウに当たる。

<ちらしより>そう遠くない未来。その旅客機は、日本へ戻る途中、とある戦地の海辺に墜落した。
油まみれの海に投げ出されて奇跡的に生き残った10人足らずの男女。
彼らは廃墟と化したかつての住居にかくまわれる。
屋上から見えるのは海と、荒れ果てた砂地に飛び交う銃弾と塵、転げ回り、やがて動かなくなる兵士たち。
そして、浜に頭から突き刺さった謎のロケット…。
絶望と希望を独自の距離感でスケッチする、ケラリーノ・サンドロヴィッチの最新群像劇。

シリーウォーク

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