2nd SESSION

SLAPSTICKS

1993/12/17〜30 新宿シアタートップス

作・演出:ケラリーノ・サンドロヴィッチ

出演:秋山菜津子、犬山犬子、今江冬子、江馬小百合、大堀浩一、佐々木慎、新村量子、平山直樹、藤田秀世、本田宙、道方千晶、峯村リエ、みのすけ、三宅弘城、山崎一

<主要な役>ビリー・ハーロック=山崎一・三宅弘城、アリス・ターナー=秋山菜津子、マック・セネット=平山直樹、ロスコー・アーバックル=藤田秀世

<メモ>・ケラ作品初の評伝劇。これ以降ナンセンス一本槍でない作品も多く手がけるようになるケラだが、トーンも静かで、当時としてはかなり異色だった。ただ評価は上々で、むしろ「4 A.M.」の方が戸惑った観客が多かった。現在も、ケラ作品のターニングポイントと言われる公演。
・ナイロン通販でサントラ購入可能。未映像化。再演時のものはDVD化されているが、この公演の映像は現在皆無。
・セットは抽象セットで上下に分かれているだけの、一般的な芝居のセット。そこにテーブルや椅子などが置かれ、カメラなどの小道具が出てくるだけの、単純極まりないもの。演出的にも新劇でさえ成立しそうな一般的なステージ。この芝居の持つ繊細なニュアンスを最大限生かし切ったものになった。だが、シチュエーションコメディーとは趣を異にしている。
・ケラが非常に好んだ、20年代のサイレント・コメディの内幕を舞台化したもの。幕間に実際にサイレント・コメディがスライドで流された。
・当初のタイトルは「笑いの停まった日」。かなりいいタイトルだが、そのまますぎてこれだと面白みがない。
・この映像は主にケラが所存していたもの。中学時代に輸入フィルム店から買いあさっていた8ミリや16ミリフィルムで、父親の預金から200万を勝手におろして買ったものと言われている。これでケラは「父親に思いっ切り殴られた」との記録がある。当たり前っちゃあ当たり前だが、こうやって作品の中で日の目を見ることができたのは幸運だろう。
・評伝劇というだけあって、アーバックルの訴追事件がストーリーの軸をなしている。
・アリス役の秋山菜津子が主役でクレジットされているが、実際の出演時間は15分程度。再演の際にこの役は大幅に膨らまされた。
・この公演での山崎一の役は、ナイロン諸作品の中でも超当たり役。クライマックスで若き日の自分を涙ながらに見つめるシーンは、観ている側にまで涙を誘った。三宅弘城もこの公演で圧倒的に演技の幅が広がった。
・この公演を最後に大堀浩一、新村量子はナイロンに姿を見せなくなる。藤田秀世は正式退団。正式復帰は10年後の「ハルディン・ホテル」(この間にも断続的に出演はしている)。手塚とおるが出ない作品というのも当時は異色で、制作との間でかなりもめたようだ。
・平山直樹はこの後も「フリドニア」に出演。東京壱組に参加していた関係で、この仲が二瓶鮫一との間を取り持つことになる。
・同時並行で平日2時から9プログラムのサイレント・コメディの上映会を実施。高校時代に喜劇映画研究会の初代会長を務めていた関係で、多くのフィルムが借りられた。一体、日大鶴ヶ丘高校ってどんな場所なのか、本当によく分からなくなるエピソード。
・ケラファンはよく影響されてマルクス兄弟やモンティ・パイソンを好んで見るが、この公演を機にサイレント・コメディにまで手を出す人が増えた。影響力の強さを感じさせるが、そうなるといくらお金があっても足りないような気がする。
・犬山犬子やみのすけが敢えて脇役に回った。犬山犬子はキャリー役とルイーズの母役。みのすけはハリー役とラジオの司会者役。劇団健康からの流れを完全に断ち切ったリアルな役回り。当時本人たちは「ナイロンでもこんなパルコでやりそうな作品をやるんだなあ」と感慨に浸っていたらしい。もちろん本当にやるとは露とも思っていなかっただろう。
・セネットやアーバックルなどの喜劇監督・俳優はもちろん実在の人物だが、ビリーは架空の人物。

<ちらしより>時は1920年代、喜劇映画の黄金時代。ナイロン100℃第2回作品は、当時のフィルムの断片を上映しながらあの頃の奇妙な映画人達の日常を静かにスケッチする試み。上映会と演劇公演、フィルムと役者、20年代と90年代の華麗なるセッション。

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